台湾「国民投票法(公民投票法)」制度概要

台湾「国民投票法(公民投票法)」制度概要

 

「国民投票法(公民投票法)」制度

はじめに

台湾において、2003年12月31日「国民投票法(中国語:公民投票法)」が公布施行された。

公民投票法には「全国性国民投票」と「地方性国民投票(住民投票)」がある。

しかし、2003年施行の「国民投票法」は制限が多く、実際は適用が困難であるとされた。


主な問題点は以下の通りである。

1. 提案人数の人数

2. 投票可決の基準

3. 3年以内の再提案禁止

4. 投票審議委員会による投票内容の審査

5. 憲法改正、主権変更等に関する創制の排除


そのため、2018年01月03日に全面改正がなされた。

主な改正点は以下の通りである。

1. 国民投票の投票権の年齢の引き下げ(20歳から18歳)

2. 国民投票の提案人、連署人の人数の緩和

3. 国民投票の可決条件の緩和

4. 同一事項の国民投票の提案期間の短縮(3年から2年)

5. 先住民族基本法に違反する国民投票の禁止


国民投票の資格

1. 投票権者

年齢満18歳以上の中華民国国民(公民投票法第7条)

2. 提案者、連署者

投票権を有するもので、中華民国、各当該直轄市、県(市)に6箇月以上継続して滞在しているもの(公民投票法第8条第1項)。


国民投票の適用範囲

「全国性」

1. 憲法に関する国民投票(現在は、憲法改正案または領土変更案のみ可能)

2. 法律に関する国民投票

3. 立法原則に関する創制

4. 重大政策に関する創制または国民投票

ただし、予算、租税、給料及び人事事項は国民投票の対象にならない(公民投票法第2条4項)。

「地方性」

1.地方自治条例に関する住民投票

2.地方自治条例に関する立法原則の創制

3.地方自治事項の重大政策に関する創制または国民投票

ただし、予算、租税、給料及び人事事項は国民投票の対象にならない(公民投票法第2条4項)。


国民投票の提案方法

国民投票の提案には4つの方法がある。(人民連署提案、立法院提案、行政院提案、總統交付)


人民連署提案

(フローチャート)

提案 → 連署 → 中央選挙委員会審査(全国性)、直轄市政府県(市)(地方性) → 案件成立公告 → 国民投票

(1)提案

国民投票資格のあるもので、中華民国、各当該直轄市、県(市)に6箇月以上継続して滞在しているものが提案人になることができる(公民投票法第8条)。

全国性国民投票(国民投票)の場合、提案人の人数は、提案時において直近の総統選挙、副総統選挙の選挙人総数の10000分の1以上(公民投票法第10条第1項)。

地方性国民投票(住民投票)の場合、提案人数は、直轄市、県(市)の自治条例でこれを定める(公民投票法第28条)。

(2)連署

国民投票資格のあるもので、中華民国、各当該直轄市、県(市)に6箇月以上継続して滞在しているものが連署人になることができる(公民投票法第8条)。

全国性国民投票(国民投票)の場合、必要な連署数は、提案時において直近の総統選挙、副総統選挙の選挙人総数の1.5%以上である(公民投票法第12条)。

地方性国民投票の場合、提案人数は、直轄市、県(市)の自治条例でこれを定める(公民投票法第28条)。

(3)中央選挙委員会審査

全国性国民投票は、中央選挙委員会。(公民投票法第3条第1項)

地方性国民投票は、直轄市、県(市)政府。(公民投票法第3条第2項)


立法院提案

(フローチャート)

提案 → 立法院決議 → 中央選挙委員会審査 → 案件成立公告 → 国民投票

重大な政策の創制または国民投票に関し、国民投票をする必要があるときと認めるときは、主文、理由書を付して、立法院院会を通過した後、中央選挙委員会が国民投票を行う。

立法院で否決された場合は、2年間は同事項の国民投票を提案することはできない(公民投票法第15条第3項)。


行政院提案

(フローチャート)

提案 → 立法院決議 → 中央選挙委員会審査 → 案件成立公告 → 国民投票

重大な政策の創制または国民投票に関し、国民投票をする必要があるときと認めるときは、主文、理由書を付して、立法院院会を通過した後、中央選挙委員会が国民投票を行う。

立法院で否決された場合は、2年間は同事項の国民投票を提案することはできない(第14条第2項)。


総統交付(防御性国民投票)

(フローチャート)

総統交付 → 行政院決議 → 中央選挙委員会審査(日程に関する法適用なし) → 案件成立公告 → 国民投票

国家が外部圧力による脅威に遭い、国家主権が改変される恐れがあるときは、総統は、行政院院会の決議を得て、国家安全に関する事項を、国民投票することができる(公民投票法第16条第1項)。


国民投票の進行

(全国性)

全国性のテレビ等により、5回以上の発表またはディベートの実施(公民投票法第17条第3項)。

(地方性)

発表またはディベートの回数は自治条例でこれを定める(発表またはディベート第28条)。


2021年より2年毎に、8月の第4土曜日に国民投票を実施(公民投票法第23条第1項)。


国民投票の結果

1.有効同意票数が不同意票数を上回るとともに、有効同意票が有権者数の4分の1以上であるときは、通過とする(公民投票法第29条第1項)。

2.有効同意票が不同意票数より少ないとき、または有効同意票数が投票権者総数の4分の1以上に満たないときは、不通過とする(公民投票法第29条第2項)。


国民投票の効力

1.創制を経た立法原則は、立法機関は変更することができない。法律、自治条例は実施後2年以内にこれを修正または廃止してはいけない。(第30条第4項)

2.複決を経て廃止になった法律、自治条例、は立法機関は2年以内にこれに相当する法律を再制定してはいけない。

3.創制又は複決を経た重大政策は、行政機関は 2 年以内に当該創制または複決の内容を変更してはならない(第30 条第5項)。

4.主務期間公告の国民投票の結果から、2年以内は、同一事項の提案の提出はできない(公民投票法第30条第6項)。



2018年修正後の国民投票法 一覧法

国民投票資格満18歳以上の中華民国国民かつ、各当該直轄市、県(市)に6箇月以上継続して滞在しているもの。
国民投票の提案者、連署者投票権を有するもので、中華民国、各当該直轄市、県(市)に6箇月以上継続して滞在しているもの
国民投票事項(全国性)1. 憲法に関する国民投票(現在は、憲法改正案または領土変更案のみ可能)
2. 法律に関する国民投票
3. 立法原則に関する創制
4. 重大政策に関する創制または国民投票
ただし、予算、租税、給料及び人事事項は国民投票の対象にならない。
国民投票事項(地方性)1.地方自治条例に関する住民投票
2.地方自治条例に関する立法原則の創制
3.地方自治事項の重大政策に関する創制または国民投票
ただし、予算、租税、給料及び人事事項は国民投票の対象にならない。
国民投票提案方法1.人民連署提案
2.立法院提案
3.行政院提案
4.總統交付
国民投票の進行(全国性)全国性のテレビ等により、5回以上の発表またはディベートの実施。
国民投票の進行(地方性)発表またはディベートの回数は自治条例でこれを定める。
国民投票の結果1.有効同意票数が不同意票数を上回るとともに、有効同意票が有権者数の4分の1以上であるときは、通過とする。
2.有効同意票が不同意票数より少ないとき、または有効同意票数が投票権者総数の4分の1以上に満たないときは、不通過とする。
国民投票の効力1.創制を経た立法原則は、立法機関は変更することができない。法律、自治条例は実施後2年以内にこれを修正または廃止してはいけない
2.複決を経て廃止になった法律、自治条例、は立法機関は2年以内にこれに相当する法律を再制定してはいけない。
3.創制又は複決を経た重大政策は、行政機関は 2 年以内に当該創制または複決の内容を変更してはならない
4.主務期間公告の国民投票の結果から、2年以内は、同一事項の提案の提出はできない