中華民国国家賠償法(日本語版)

法律名: 中華民国国家賠償法
施行 : 1982年 07 月 01 日

第 1 條
本法は中華民国憲法第24条の定めるところによる。

第 2 條
1.本法において公務員とは、法令に基づき公務に従事する人をいう。
2.公務員は職務を執行し公権力を行使するとき、故意または過失によって不法に人民の自由または権利を侵害した場合は、損害賠償責任を負う。公務員が職務の執行を怠り、人民の自由または権利が損害を受けた場合も同様とする。
3.前項において、公務員に故意または重大な過失があるときは、賠償義務行政機関は当該公務員に対し求償権を有する。

第 3 條
1.公の公共施設が設置もしくは欠陥により、人民の生命、身体もしくは財産が損害を受けたときは、国家は損害賠償責任を負う。
2.前項において、損害原因責任を負う者がいるとき、賠償義務行政機関は当該責任を負う者に対し求償権を有する。

第 4 條
1.委託を受け公権力を行使した団体で、当該団体の職務執行者が公権力を行使したときには、委託した行政機関の公務員が公権力を行使したものとみなす。委託を受け公権力を行使した個人で、職務執行で公権力を行使したときも同様とする。
2.前項の職務執行者に故意または重大過失があるときは、賠償義務行政機関は委託した団体もしくは個人に対し求償権を有する。

第 5 條
国家賠償に関し、本法に規定するもの以外は、民法の規定を適用する。

第 6 條
国家賠償は、本法及び民法以外その他法律に特別な規定がある場合は、その他法律を適用する。

第 7 條
1.国家が損害賠償責任を負う場合、金銭をもってこれを行う。ただし、原状回復が適している場合は、請求に基づき、損害発生前の原状への回復を請求できる。
2.前項の賠償にかかる経費は、当該各級政府の予算編成から支払うものとする。

第 8 條
1.賠償請求権は、請求権を有する者が損害を知ったときから、2年間行使しないときは消滅する、損害発生のときから5年経過したものも同様とする。
2.第2条第3項、第3条第2項及び第4条第2項の求償権は、賠償金の支払いもしくは原状回復の日から、2年間行使しないときは消滅する。

第 9 條
1.第2条第2項に基づき損害賠償を請求する場合は、公務員が所属する行政機関を賠償義務行政機関とする。
2.第3条第1項に基づき損害賠償を請求する場合は、公共施設の設置または管理行政機関を賠償義務行政機関とする。
3.前2項の賠償義務行政機関が廃止もしくは改組により、業務を引き継いだ行政機関を賠償義務行政機関とする。業務の引き継ぎがない行政機関の場合は、上級行政機関を賠償義務行政機関とする。
4.前3項に基づき賠償義務行政機関を確定できない場合、もしくは賠償義務行政機関に争いがあるとき、当該上級行政機関にそれの確定請求をできる。当該上級行政機関は請求日から20日を超えても確定しない場合は、直接上級行政機関を賠償義務行政機関とすることができる。

第 10 條
1.本法に基づき損害賠償を請求するときは、書面を持って賠償義務行政機関に対し請求をしなければならない。
2.賠償義務行政機関は前項の請求に対し、請求権者と直ちに協議しなければならない。協議成立時は、協議書を作成しなければならず、当該協議書をもって執行をできる。

第 11 條
1.賠償義務行政機関が当該賠償を拒絶するとき、または請求の日から30日を超えても協議を開始しないとき、もしくは協議開始から60日を超えても協議不成立のときは、請求権人は損害賠償を提起できる。ただし、行政訴訟法の規定に基づき、損害賠償の請求に付帯して、同一原因事実をもって、他の起訴はできない。
2.本法に基づき損害賠償を請求するとき、裁判所は申立に基づき仮処分をすることができ、賠償義務行政機関に先に医療費と葬儀費の支払いを命ずることができる。

第 12 條
損害賠償の訴えに関し、本法に規定するものを除き、民事訴訟法を適用する。

第 13 條
審判または起訴を職務とする公務員は、職務執行により人民の自由または権利を侵害し、当該公務員が参加した審判または起訴した案件で職務上の罪を犯し、有罪が確定したものは、本法の規定を適用する。

第 14 條
本法は他の公法人のこれに準用する。

第 15 條
本法は外国人が被害者であるときは、条約または当該被害者の本国法令または慣例に基づき、中華民国国民が当該国及び当該国民と同等の権利を得るときに限り、これを適用する。

第 16 條
本法施行細則は、行政院の定めるところによる。

第 17 條
本法は中華民国70年7月1日に施行する。

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