台湾営業秘密法

台湾営業秘密法

2020年01月15日

第1条

営業秘密を保障し、産業倫理と競争秩序を維持し、社会の公共利益を調和させることを目的とするために、この法律を制定する。この法律に定めがないときは、その他法律の規定を適用する。

第2条

この法律において営業秘密とは、方法、技術、製造工程、調合、プログラム、設計またはその他の生産、販売または経営に用いられる情報であり、かつ次の要件を満たすものをいう。

一、一般的に当該情報に係わるものに知られていないこと

二、その秘密性により、実際的にまたは潜在的に経済的価値を有すること

三、保有者がすでに合理的な秘密保護措置を採っていること

第3条

被雇用者が職務上研究または開発した営業秘密は、雇用者が保有する。ただし、契約に別段の定めがあるときは、その定めに従うものとする。

2.被雇用者が職務上研究または開発したものでない営業秘密は、被雇用者が保有する。ただし、その営業秘密が雇用者の資源または経験を利用したものであるときは、雇用者は合理的な報酬を支払った後、当該事業においてその営業秘密を使用できる。

第4条

出資して他人を招聘し、従事させた研究または開発に関する営業秘密について、その営業秘密の帰属は契約の定めに従うものとする。契約による定めがないときは、被招聘者に帰属する。ただし、出資者は業務上その営業秘密を使用することができる。

第5条

数人が共同で研究または開発した営業秘密について、その持分は契約の定めに従うものとする。契約に定めのないときは、均等と推定する。

第6条

営業秘密は、全部または一部を他人に譲渡または他人と共有することができる。

2.営業秘密が共有するときは、営業秘密に対する使用または処分について、契約による定めがないときは、共有者全員の同意を得なければならない。ただし、各共有者は、正当な理由がないときは、同意を拒絶してはならない。

3.各共有者は、他の共有者の同意を得ることなく、その持分を他人に譲渡してはならない。ただし、契約に別段の定めがないときは、その定めに従うものとする。

第7条

営業秘密の保有者は、他人にその営業秘密の使用を許諾することができる。その使用許諾の地域、時間、内容、使用方法またはその他事項は、当事者の定めに従うものとする。

2.前項の使用許諾を受けた者は、営業秘密保有者の同意を得なければ、その使用許諾を受けた営業秘密を第三者に再許諾してはならない。

3.営業秘密の共有者は、共有者全員の同意を得なければ、他人に当該営業秘密の使用を許諾することはできない。ただし、各共有者は、正当な理由がないときは、同意を拒絶してはならない。

第8条

営業秘密は、質権および強制執行の対象とすることはできない。

第9条

公務員が公務執行の過程で他人の営業秘密を知りまたは所持したときは、それを使用しまたは理由なく漏洩してはならない。

2.当事者、代理人、弁護人、鑑定人、証人およびその他関係者は、司法機関の取調べまたは審理により他人の営業秘密を知りまたは所持したときは、それを使用しまたは理由なく漏洩してはならない。

3.仲裁人およびその他の関係者が仲裁事件を処理においても、前項の規定を準用する。

第10条

次の各号のいずれかに該当するときは、営業秘密の侵害とする。

一、不正な手段により営業秘密を取得するとき。

二、前号の営業秘密であることを知りまたは重大な過失により知らないで、取得、使用または漏洩したとき。

三、営業秘密を取得した後、それが第1号の営業秘密であることを知りまたは重大な過失により知らないで、使用または漏洩するとき。

四、法律行為により取得した営業秘密を、不正な方法で使用または漏洩したとき。

五、法令により営業秘密を守る義務があるにもかかわらず、使用または理由なく漏洩したとき。

2.前項の不正な方法は、窃取、詐欺、脅迫、賄賂、無断複製、秘密保持義務違反、他人を勧誘し守秘義務に違反させ、またはその他これらと類似する手段をいう。

第 11 條

営業秘密が侵害されたとき、被害者はその侵害の排除を請求することができる。侵害の恐れがあるとき、その侵害の防止を請求できる。

2.被害者が前項の請求をするとき、侵害行為によって作成された物または専ら侵害行為をなすために供された物の廃棄、またはその侵害に供された物につき、廃棄またはその他必要な措置を必要できる。

第12条

故意または過失により不法に他人の営業秘密を侵害した者は、損害賠償の責任を負う。数人が共同して不法に侵害したときは、連帯して賠償責任を負う。

2.前項の損害賠償請求権は、請求権者がその行為および賠償義務を負う者を知ったときから2年間行使しないときは、消滅する。その行為の時から10年を経過したときも同様とする。

第13条

前項に基づき損害賠償を請求するとき、被害者は次の各号のいずれかを選択し、請求することができる。

一、民法第216条の規定に基づき請求する。ただし、被害者がその損害を証明できないときは、その使用時に通常の状態に基づき予期できる利益から、侵害を受けた後、同一の営業秘密の使用により得た利益を差し引いた額をその損害の額とすることができる。

二、侵害者がその侵害行為により得た利益を請求する。ただし、侵害者がそのコストまたは必要経費を証明できないときは、その侵害行為により得た全ての収入をその得た利益とする。

2.前項の規定に基づき、侵害行為が故意であるときは、裁判所は被害者の請求により、侵害の状況に基づき損害額以上の賠償を参酌し決定できる。ただし、すでに証明された損害額の3倍を超えることはできない。

第13条の1

自己または第三者の不法利益を意図し、または営業秘密の保有者の利益に損害を加える目的で、次の各号のいずれかに該当する者は、5 年以下の有期懲役または100 万新台湾ドル以上1,000 万新台湾ドル以下の罰金に処し、またはこれを併科することができる。

一、窃取、横領、詐術、脅迫、無断複製またはその他不正な方法により、営業秘密を取得し、または取得した後に使用、漏洩した者。

二、知りまたは所持している営業秘密について、許諾を得ずに、または許諾の範囲を超えて当該営業秘密を複製、使用または漏洩した者。

三、所持している営業秘密について、営業秘密の保有者から削除、廃棄の告知を受けた後も、当該営業秘密を削除、廃棄せず、または隠蔽した者。

四、他人が知りまたは所持する営業秘密が前3号に定める状況があることを知りながら、それを取得、使用または漏洩した者。

2. 前項の未遂犯は、処罰するものとする。

3. 罰金を科するとき、犯罪行為者の得た利益が罰金の最高額を超える場合は、その得た利益の3倍の範囲内で斟酌して加重することができる。

第13条の2

外国、中国、香港またはマカオで使用することを意図し、前条第1項各号の罪を犯した者は、1年以上10年以下の有期懲役に処し、300 万新台湾ドル以上5,000 万元新台湾ドル以下の罰金を併科することができる。

2. 前項の未遂犯は、処罰するものとする。

3. 罰金を科するとき、犯罪行為者の得た利益が罰金の最高額を超える場合は、その得た利益の2倍から10倍の範囲内で斟酌して加重することができる。

第13条の3

第13条の1の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

2. 共犯の1人に対し告訴または告訴を取り下げたとき、その効力は他の共犯に及ばない。

3. 公務員または元公務員であった者が、職務により他人の営業秘密を知りまたは所持し、故意に前2条の犯罪を犯したときは、その定めた刑の2分の1まで加重する。

第13条の4

法人の代表者、法人または自然人の代理人、被雇用者またはその他従業員が、業務の執行により、第13条の1、第13条の2の犯罪を犯したとき、当該条文の規定に基づきその行為者を処罰するほか、当該法人または自然人にも当該条文に規定の罰則を科す。ただし、法人の代表者または自然人が犯罪の発生に対し、すでに防止行為を尽くしていたときは、この限りではない。

第13条の5

認可を経ていない外国法人は、この法律に規定する事項に関して告訴、自訴または民事訴訟を提起できる。

第14条

裁判所は、営業秘密に関する訴訟事件を審理するため、専門法廷を設置し、または担当者を指定してその処理に当たらせることができる。

2.当事者が提出した攻撃または防禦方法が営業秘密に関わる場合、当事者の申立を経て、裁判所が適当と認めたときは、裁判の非公開、または訴訟資料の閲覧を制限することができる。

第14条の1

検察官は、営業秘密に関わる事件の取り調べにおいて、取調べの必要があると認定したときは、取調べの内容に接触した被疑者、被告人、被害者、告訴人、告訴代理人、弁護人、鑑定人、証人またはその他関係者に取調べの秘密保持命令を発することができる。

2.取調べの秘密保持命令を受けた者は、当該取調べ内容について、次の行為を行ってはならない。

一、取調べ手続き実施の目的以外への使用

二、調査の秘密保持命令を受けていない者への開示

3,前項の規定は、取調べの秘密保持命令を受けた者が、当該取調べ内容について、取調べの前にすでに取得または所持していたときは、これを適用しない。

第14条の2

取調べの秘密保持命令は書面または口頭でこれを行わなければならない。口頭の場合は、直接告知するとともに調書に記載しなければならない。さらに営業秘密の保有者に意見陳述の機会を与え、7日以内に別途書面で取調べの秘密保持命令を発令することができる。

2.前項の書面については、取調べの秘密保持命令を受けた者に送達するとともに営業秘密の保有者に通知しなければならない。送達及び通知前に、営業秘密の保有者に意見陳述の機会を与えなければならない。ただし、前項の規定に基づき、営業秘密の保有者に意見陳述の機会を与えたときは、この限りではない。

3.書面にて取調べの秘密保持命令を行うときは、取調べの秘密保持命令を受ける者に送達した日より起算して効力を生ずる。口頭で行ったときは、告知の時を起算して効力を生ずる。

4.取調べの秘密保持命令には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

一、取調べの秘密保持命令を受ける者

二、秘密保持すべき取調べの内容

三、前条第2項に基づく禁止または制限行為

四、違反の効果

第14条の3

取調べ中秘密保持すべき原因が消滅または取調べの秘密保持命令の内容に変更があるときは、検察官は職権に基づき取調べの秘密保持命令を取消しまたは変更することができる。

2.案件が起訴猶予処分または不起訴処分が確定したとき、もしくは取調べの秘密保持命令が起訴の効力部分に属しないときは、検察官は職権または取調べを受けた者の申立てにより、その取調べの秘密保持命令の取消しまたは変更をすることができる。

3.検察官は、前2項の取調べの秘密保持命令を取消しまたは変更の処分をするため、取調べの秘密保持命令を受けた者及び営業秘密の保有者に意見陳述の機会を与えることができる。当該処分は、書面を以て取調べの秘密保持命令を受けた者及び営業秘密の保有者に送付しなければならない。

4.案件の起訴後、検察官は取調べの秘密保持命令の起訴効力が及び部分を営業秘密の保有者及び取調べの秘密保持命令を受けた者に通知するとともに、秘密保持命令、取調べの秘密保持命令に関する権益を告知しなければならない。営業秘密の保有者または検察官は、知的財産案件審理法の規定に基づき、裁判所に秘密保持命令の発令を請求できる。取調べの秘密保持命令の起訴効力が属する部分において、その請求範囲は、裁判所の決定が確定した日から起算して、その効力を失う。

5.案件起訴後、営業秘密の保有者または検察官が裁判所に属した日から起算して30日以内に、裁判所に秘密保持命令の発令の請求をしなかったときは、裁判所は取調べの秘密保持命令を受けた者または検察官の申立てに基づき、取調べの秘密保持命令を取消すことができる。取調べの秘密保持命令の起訴効力が属する部分において、裁判所が決定した取消し範囲内で、裁判所の決定が確定した日から起算して、その効力を失う。

6.裁判所は、前項の決定前、先に営業秘密の保有者および検察官に意見を求めなければならない。前項決定は、営業秘密の保有者、取調べの秘密保持命令を受けた者および検察官に送達しなければならない。

7.取調べの秘密保持命令を受けた者または営業秘密の保有者は、第1項及び第2項の検察官の処分に対して、不服を申立てることができる。検察官、取調べの秘密保持命令を受けた者または営業秘密の保有者は、第5項の裁判所の決定に対して、抗告することができる。

8.前項不服の申立ての手続きは、刑事訴訟法第403条から第419条の規定に準用する。

第14条の4

取調べの秘密保持命令に違反したときは、3年以下の懲役、拘留または100万新台湾ドル以下の罰金に科す、もしくは併科する。

2.外国、中国、香港またはマカオにて秘密保持命令に違反したときは、犯罪地の法律の有無を問わず、前項の規定を適用する。

第15条

外国人の属する国と中華民国の間で、営業秘密を保護する国際条約に未加入または営業秘密保護を保護する条約、協定がないもしくは、中華民国の営業秘密に対して保護を与えないとき、その営業秘密は保護しないことができる。

第16条

この法律は、公布のときより施行する。