ブラック校則と台湾

ブラック校則と台湾

 

2021年03月05日

近年、日本の新聞やニュースにおいてよく「ブラック校則」の報道を目にする。ブラック校則(中国語では「黑色校規」という)とは、一般的に「理不尽な校則」という意味で使用されることが多い。このブラック校則には人権侵害に該当する恐れのものも多く存在し、社会問題になっている。

最近の報道でいえば、大阪府羽曳野市の学生が茶色っぽい髪を黒く染めるよう教諭らに強要されて、不登校になったとして大阪府を相手に約220万円の損害賠償を求めた訴訟がある。判決は、髪の染色などを禁じる校則は「学校の裁量権の範囲内」との判断を示す一方で、不登校後の学校側の対応を違法と認定し大阪府に33万円の支払いを命じている[1]。つまり、当該校則自体は違憲ではないということである。

この他にも、九州福岡県弁護士会が福岡市立中学校全69校を調査した結果、下着の色を指定する学校が約8割に上回り、これらブラック校則の改善を求め福岡県弁護士会が福岡市教委に意見書を提出[2]するなどブラック校則問題は益々注目を浴びている。

これらの記事は、すぐに中国語に翻訳され台湾の各メディアで配信された[3]。その結果、ソーシャルメディア上では日本のこのブラック校則への批判が相次いだ。特にこの下着の色等の指定等に関してはSNS上では日本に対し、ありえない等のコメントが多く寄せられた。

では、日本に対しありえないとコメントを寄せる台湾の校則は、どうなっているのだろうか?台湾は、近年同性婚を認めるなど人権に関わる問題に対して積極的な姿勢を示している。例えば、男女平等の基準である国連開発計画(UNDP)が発表するジェンダー不平等指数(GII)に基づいて台湾の指数を計算した結果、2020年度台湾は29位(1位アイスランド、2位ノルウェー、3位オランダ)、アジアでは1位となっている。この基準によれば、他のアジア諸国は、シンガポール55位、中国107位、韓国109位、日本122位となっている[4]。ちなみに、国連開発計画(UNDP)が発表するジェンダー不平等指数(GII)に基づいて計算した結果というのは、台湾は国連に加盟していないため、UNDPが発表するランキングには含まれていないため、台湾独自に計算したものである。

日本よりも男女平等指数は、遥かに上位である台湾、同性結婚も認められた台湾である、日本のブラック校則のことを揶揄しても仕方ないように思える。しかし、実際は台湾にもブラック校則は多く存在している。例えば、台湾雲林県の私立中学校では、女子生徒の下着の色は薄い地味な色と規定されている[5]。また、台湾台中市の中学校においては髪型等が規定されている[6]。一応、台湾において教育部(日本の文部科学省に相当)が2017年「学校の教師における補導と学生指導方法の注意事項に関する規定(學校訂定教師輔導與管教學生辦法注意事項)」の改正により、学生の危害を防止または疫病の伝染防止の必要がある場合を除き、学生の髪型を制限してはならないとの通知はされている。ちなみに、服装に関しては、「校内にて公聴会、説明会または全校アンケート調査等により、学生及び保護者の意見を参考にして規定する」とされている。いずれにしても、これらは教育部からの通知であり、法律に基づくものではない。そのため、現在法制化に向けた動きも出てきている。

結論としては、台湾にもブラック校則は存在している。ひょっとすると、どこの国にでも存在している問題なのかもしれない。いずれにしても、このような、ブラック校則が少しでも早くなくなり、誰もが生きやすい社会なればと思う。


[1] 日本経済新聞、「髪黒染め」校則は適法、府に一部賠償命令、2021年02月16日。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOHC10AFC0Q1A210C2000000/(最終検索日 : 2021 年03月04日)。

[2] 読売新聞オンライン、「下着の色は白」校則で指定、市立中の8割…「廊下でシャツ開け確認」「違反して脱がされた」、2020年12月23日。https://www.yomiuri.co.jp/national/20201223-OYT1T50108/(最終検索日 : 2021 年03月04日)。

[3] 李秀坤、聯合新聞網、日女學生天生棕髮被逼染黑 校方判賠8萬元、2021年02月20日。

https://udn.com/news/story/6812/5263779(最終検索日 : 2021 年03月04日)。

[4] 行政院性別平等會、2021年性別圖像、第2頁、2021年01月。

[5] 宋原彰、聯合報中時新聞網強制女生穿淡素色內衣 雲林某私中校友接連曝超扯校規、2021年02月19日。

https://www.chinatimes.com/realtimenews/20210219001472-260402?chdtv(最終検索日 : 2021 年03月04日)。

[6] 余采瀅、聯合報新聞網、台中市有國中還有髮禁?校方︰只勸導未懲處、2021年02月04日。https://udn.com/news/story/6898/5232072(最終検索日 : 2021 年03月04日)。